2020年12月30日水曜日

PQ1CZ1 で両電源作った

 部品箱に PQ1CZ1 がありました。
チョッパ式レギュレータなので負の定電圧ができるとのことで、両電源モジュールを作ってみようと思いました。


久しぶりの工作で、ワクワクと不安が入り混じっています。
部品の位置決めに時間がかかりましたが、回路は IC に全部入ってるので説明書通りにインダクタとコンデンサを付ければ出来上がり、のはずです。


負電圧が伸びない

 はんだ付けし終わった基板に目を通してから電源につなぐ。電流計を見ながら徐々に電圧を上げていく。電流計が一瞬振れるがすぐに落ち着く。これはコンデンサへの突入電流。はんだ付けのミスはない。

さて、出力電圧を見てみましょう。
正電圧側は 7.6 V、しかし負電圧側が -1.5 V。

なぜだろうと思ってインダクタを見てみたら規則的な発振があります。IC はちゃんと動作しているので…

あぁこれはフィードバック用の抵抗分圧を逆につけてるんだなと修正。

抵抗分圧の基板側はデータシートを倣って R1= 1 kΩ としました。こうして足を出してやると外付けの抵抗で可変したり微調整したりできます。
このとき使った R2 は 5.1 k で、出力は ほぼ計算通りの値です。

自分用メモ:
R1+=0.999 kΩ、R1-=0.997 kΩ。端子は左から Vin、V+out、R2+、GND、R2-、V-out。

抵抗を付け直して↓

出た! 両電源出た!

ハイ、出来上がりです。
いやー当たり前ですがきちんと部品を付ければちゃんと動作しますね~それではまたいつかどこかで~


と終わるはずもなく。
本当に想定どおりに動作しているでしょうか?
話はもう少し続きます。


負荷テスト

 仕様ではスイッチング電流は最大 1.5 A。このモジュールでそこまで大電流をとろうとは思わないです。しかし抵抗分圧レールスプリッタや TJ7660 と違ってレギュレートされた両電源なので、定格 500 mA くらい出てくれるとうれしいですね。

最初は 10 mA でテスト。

いきなり負電圧側で問題発見! 正電圧側がつられて揺らいでいます。

赤 (1ch) が正電圧、黄色 (2ch) が負電圧

この問題は、入力コンデンサの位置が悪いために起こっています。

チョッパ型スイッチング方式では出力コンデンサが必須となるため、基板上にコンデンサを載せました。ですが入力コンデンサは、例えばブレッドボード上で電源ラインにつければよいと考えていました。

1000 uF を IC のすぐそばにつけてみたところ、この揺らぎは劇的に改善されました。

ここじゃなくてここ (わからん)

「なるべく IC の近くに」ですね。


インダクタの大きさ

 データシートに記載されている回路図 (定数) が正負で異なり、正では 210 uH / 470 uF、負では130 uH / 2200 uF となっていてよくわかりません。大きなインダクタンスが必要ないっぽいので、手元にある 100 uH にしました。

なお、正電圧側では目立ちませんが負電圧側では負側に大きなスパイクが表れます。
チョッパ式の極性反転はそういうものなのかな。

こんな感じで付け外しして試しましたが、結局最初の 100 uH に戻しました。

電流取らないなら可変インダクタもありかなと思いましたが今回はやりませんでした。理想的な波形が分からないと意味がないです。

知らないこと、分かりたいことだらけです。


平滑チョークコイル

 Vin 13 V、Vout± 10 V、負荷電流 -100 mA での両電源の波形。

だいぶまともに動作するようになりました。なにせ入力コンデンサの効果が絶大でした。
しかし、見てわかる通りスパイクが大きいのが気になります。

DC-DC コンバータ回路では出力の末端あたりに直列に挿入されたインダクタ (平滑チョークコイル) があります。これをやってみましょう。

ブレッドボード上の出力に 10 uH のインダクタを直列につないでみると以下のような波形になりました。

左 (背景) が無負荷時、右下が負荷時

-250 mV のスパイクが -60~-20 mV にまで縮んだので改善されていると言えるでしょう。

ただ、GND 側にも少し振れるようになってしまいました。インダクタを 1 mH にしたときも GND 側に大きく振れました。ということはチョークコイルのインダクタンスが大きすぎるのかなと思います。


お楽しみタイム

 さぁ、前に作った電子負荷を使って正電圧側をいじめてみましょう!

* 電子負荷にはモニタをつけようと思っていたのですがやらずじまい… 蓋を開けて直接 電流検出抵抗の電圧を見ます。

1 A 出ることは出るみたいです。LED 用とかテキトーな用途なら良いですがこの波形を知っていたら使う場所は限られてきます。
電源と名乗るには少し頼りないですが、しかしながら DC-DC コンバータモジュールってこういうものな気がします。100 円そこらの電子工作用のやつ (いやこういうこと言わないほうがいいな…)。

負荷をかけて重くしていくとキーン↗という音が聞こえてきてかっこいい。4-8 kHz あたりなのでイヤホン越しでも聞こえました。

なお、負電圧側はシンク型電子負荷ではテストできません。

http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5992-3625JAJP.pdf

正電源に対して電力を吸い込んで消費するのが正の負荷、負電源に対して電力を流し込んで供給するのが負の負荷とのこと。どうやらもう 1 つ電源が必要なようです。
次から次に新しいことをしているといつまでたっても日記が書き終わらないのでこの話はいったんここで切り上げます。

早く電源が作りたい。僕は電源が作りたいだけなんだ!来年こそは作れてほしい!


完成!

モジュールはこんな感じになりました。憧れの縦基板第一号。
両電源を試してみて、そこそこ動くところまでやってみました。楽しかったですし分かったことが増えましたが、分からないことも増えました。ヘヘッ

一応パーツリストも:

エクール基板
 https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-06053/

インダクタ 221、101 (、102)
 https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-08326/
 https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-08325/
 (https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-13970/)

チョッパ型レギュレータ *2
 https://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-01573/

導電性高分子アルミ電解コンデンサ *2
 https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-08299/

チップ積層セラミックコンデンサ 10uF25V2012(30個入り) *取り扱い終了
 https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-07388/

電解コンデンサ (日本ケミコン LXJ) 1000uF25V105℃ (4個入り)
 https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-07767/

SBD *2
 ebayで買ったよくわからないやつ。SS110 とあるので 100 V 1 A らしいです。
今回の回路の持ちはダイオードにかかってるので、ちゃんとしたのを使った方がよいような気がしますが試作なので。Vf が 0.2 V 程度なのでよいものだと思いましたが、今考えるとインダクタからミリボルト単位を気にする電圧は出てこないような気はします。

すずメッキ線
 https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-02220/

エナメル線
 https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-11531/



ここからは余談コーナー


チョッパ式レギュレータ

 まえ、KIC-053 が壊れてる!と思ってバラしました。
しばらくしてからこれを知りました。
https://akizukidenshi.com/catalog/faq/goodsfaq.aspx?goods=M-02043

破壊せずに分解しただけだったので、インダクタをつないでコンデンサをつけると動作しました。が、初期電圧が 5 V のところ 7.2 V になっていてどこか壊れてますね。もったいないなー

ここ最近で故障を確認した部品たち R.I.P.

SUNTAN の多回転ボリュームは秋月で初の初期不良品でした。BOURNS のはこの手で燃やして光ったのをはっきり覚えています。使おうと思って部品箱から取り出したら 2 つとも壊れていてしょんぼり。この手のボリュームは値段が高いですが、蓋を開けてみると美しい造形をしていてなるほどなと思います。高いけど。


画面保護シート

 液タブをペーパーライクにしました。

削れる!ギャハハッ削れる!

余った (はがした) 普通の保護シートがもったいないので測定器に貼りました。

オシロは貼る前より反射してますが気分は良いですね。みんなおそろい。

2020年12月25日金曜日

LED のこと

僕は LED が好きです。ゲーミング文化はありがたいですね。ひさしぶりに WS2812B を引っ張り出してきて遊びました。

全点灯すると直視するのがイヤと思うくらいには明るいです。

いまのところ机の上が暗いのでワークライトに使えそう。

でも温度がどんどん上がっていきます。壊したくなかったのでこの辺で中断しました。

消費電力は 1 個 0.3 W らしく、それを信じれば 100 個で 30 W / 6 A となります。317 電源ではまず無理です。こういうとき ATX 電源は 400 W でも十分役に立ちますね。
317 電源で試していた頃は過熱保護がかかってすぐ暗くなっていました。ということはこの光量でうわぁまぶしいなぁと思えたのは今回が初めてということになります。3 年越しの実力発揮。

でもこの LED は投光器ではないので、全点灯で白にするというのはとてももったいない使い方だなぁと思いました。こいつは "ゲーミング" の正体なのですから、やっぱり七色に光らせないと面白くない。

来た。これぞ。

仮に照明器具として使おうとした場合には、冷却機構と電源が必要です。
電源については手配に時間がかかるとかコストがかかるという種の悩みなのでよいのです。問題は熱です。温度上昇速度が 1 ℃/s くらいなら伝えてやればなんとか放熱できるでしょう。ですがこの製品にヒートシンクは適していません。シリコンシートや非導電性のコンパウンドを使えば工作できないこともないですが、そのレベルまでやるなら RGB パワー LED が脳裏をよぎります。パワー LED は最初から放熱が考えられていますし、スペックも選び放題です。ちなみに 12 V * 2.5 A も 30 W で AC アダプタの入手性が良いです (定格いっぱいで使うのは気持ちが悪いので 4 A 出力とか考えるとまた泥沼ですね)。

WS2812B が 100 個あると明るい、なので照明にしようという妄想はウーン…悪くはないですが損というか…なんか上手くまとまらないなぁと思いました。このモジュールはどう使おうか考えるのが難しいです。たまに引っ張り出してきて光らせてうれしくなりますが、いつもそこまでです。おもちゃと割り切ったほうが良いのかもしれませんね。後発の LED のほうが性能良いですし。というか線状に組みなおした方がまだ使い道がありそうな気がしてきました。


定電流回路

 RGB パワー LED が出てきたので、書きかけだった別の話題をひとつ。

先日、OPTOSUPPLY の OSTCXBCBC1E の赤を飛ばしてしまいました。

各 2 W でとりわけ珍しい部品ではないのですが、この形状をとても気に入っていました。予備はあと 2 つありますが、もう秋月で手に入らないのでほんとに壊したくなかったものです。

この LED は ESD 対策されていますが、青・緑素子は静電気に弱いので「あぁ噂のアレか、やっちまったな」と納得できますが、定電流回路を組んでドライブしていたのになぜ赤素子が…とすぐには理解できませんでした。

結論から言うと定電流回路だからこそ壊したのです。正しく実験していなかったのです。時間をかけて考えるとつじつまが合いました。

実験用に組んだ定電流回路はよくある「オペアンプ、Nch MOSFET、電流検出抵抗、リファレンス電圧」の 4 つを使ったものです。
定電流回路を開放したとき、負荷には電流が流れないのでオームの法則より∞ Ωです。また、同じ意味で∞ Ωに所望の電流を流すためにはオペアンプの出力を MAX にして∞ V を出力させようとします。

∞ V というのは実際に定電流回路に接続されている電源電圧のことです。

∞ Ωについては、「電流を検出できないほど限りなく大きな抵抗値を持っているのだと言わないと説明がつかない」という状況のことを指します。なぜそのような言い方になるのかというと、定電流回路は閉じているものだからです。このルールをやぶった回路は定電流回路ではありません。出力端子から一瞬だけ入力電圧・電流がそのまま出てくるただの厄介な回路です。

LED は電池や定電圧回路につないでも、(データシートのリマークを含めて) LED の絶対定格を下回っている限りは絶対に壊れません。しかし定電流回路にはある程度余裕をもって大き目の電力をかけているはずです。それはだいたい 5 V 以上で 1 A 以上でしょう。

長々と書きましたが、問題の本質は開放した定電流回路に LED を接続することにあります。接続です接続。タイミング・順番が諸悪の根源です。
LED を大事に思う人は凶暴な電源に直でつなぎませんよね。でも現実にはそういう事だったんですよ。はー…

「LED には定電流」「おまじないの studio.h」そういうレベルでした。実験は正しくやろう。

ここにはまさに「素人って定電流回路で LED 焼き切るよね~」って話があります。はー…

時間は戻らないし、壊れた半導体デバイスも復活しません。
今日もまた少し電気の理解が深まったので、たぶん同じ失敗はしません。たぶん。

ではまたいつか。